糸の強度と伸度
前回の記事のところどころに「強度」「伸度」という言葉を使っていましたが、この言葉の意味に疑問を感じていた方も多いと思います。そこで今回は糸の「強度」「伸度」についてまとめてみます。
「強度」とは文字通り糸の強さのことであり、糸を引っ張ったときの強さです。値が大きくなるほど強いということになります。糸の試験をするときには、右図のような3通りの試験をするそうです。
※このコーナーでは、皆さんにわかりやすい方が良いと思って「強度」という言葉で統一して使っていますが、正しくは「強力」と言うそうです。
「伸度」も、文字通り糸の伸び方を表していて、数字の大きいものの方がよく伸びるということになります。伸度がある程度あった方がしなやかに感じます。
ここまで読むと、「強度」「伸度」両方の値が大きい糸が良い糸のように思えますが、必ずしもそうではありません。
- 厚物縫いをするとき、必要以上に強い糸を使うと生地を傷めるときがあります。
- シャッペスパン シャッペのような強度が大きく伸度が小さい糸でニットの襟ぐりを縫って、頭を通そうとして糸が切れてしまった経験はありませんか?ニットは伸度の高いニット用ミシン糸で縫うのが正解です。
- 目の詰まった生地を伸度の高い糸で縫うと「パッカリング」(縫い縮み)や目とびの起きる場合があります。
こんな事から、糸選びに際して生地にあった適正な糸をお使いいただくのが良いと思います。それでは使い道にあった適正な糸とはどんな糸かと言うことを大まかにまとめてみます。
綿や麻の生地をしっかり縫いたいとき
フジックス株式会社の「シャッペスパン」カナガワ株式会社の「シャッペ」を使ってください。
サテン 絹 光沢のある生地などしなやかな生地を縫うとき
フジックス株式会社の「ファイン」を使ってください。ファインが手に入らないときにはレジロン、レオナ、シャッペスパン、シャッペを使ってください。
ニットなどの伸びる生地を縫うとき
フジックス株式会社の「レジロン」、カナガワ株式会社の「エッフェル」「レオナ」を使ってください。
ボタン付けなど丈夫な手ぬい糸が必要なとき
フジックス株式会社の「ボタンつけ糸」カナガワ株式会社の「シルコート」を使ってください。
レザークラフト
カナガワ株式会社の「エスコード」を使ってください。
最後に資料を
糸の種類 | 太さ | 強度 | 伸度 |
シャッペスパン シャッペ ミシン糸 | 60番 | 13.2 | 13 |
シャッペスパン シャッペ 手ぬい糸 | 40番 | 17.4 | 13 |
ファイン ミシン糸 | 50番 | 12.9 | 17 |
ファイン 手ぬい糸 | 40番 | 16.6 | 18 |
レジロン レオナ ミシン糸 | 50番 | 11.7 | 28 |
エッフェル ミシン糸 | 50番 | 7.03 | 62.4 |
ボタンつけ糸 シルコート 手ぬい糸 | 20番 | 40.2 | 15 |
木綿糸 手ぬい糸 | 30番 | 16.5 | 5.5 |
絹 手ぬい糸 | 40番 | 14.2 | 22 |
絹 ミシン糸 | 50番 | 9.3 | 20 |